世界の国旗のデザイン

デザインから学ぶ、世界のいろいろ

国旗のアイコン

難しすぎて大混乱?太極旗の悩み

世界の国旗のデザインには、混乱や議論を招くものがいくつかあります。例えば、韓国(大韓民国)の国旗もそのひとつ。一体、何が問題になっているのでしょう。韓国の国旗にまつわる混乱について探ってみました。

韓国(大韓民国)の国旗

SOUTH KOREA  韓国/第二次世界大戦後の1948年、朝鮮半島を北朝鮮と二分する形で成立した国。中央のシンボルは「太極」と呼ばれ、太陽と月、天と地など相対するものが合わさって調和を保つという、古来中国から伝わる宇宙観を表す。太極旗/陰陽のシンボル「太極」と、四隅には「卦(け)」が配置された旗。太極と卦(け)/卦(け)は、東西南北、春夏秋冬など様々な意味がある。赤は陰陽の陽、青は陰陽の陰、白は清らかな心をあらわし、卦が用いられている。

この「太極旗」と呼ばれる韓国の国旗。 「太極」と「卦」のシンボルが使われているのが珍しく、独特の雰囲気を持った国旗です。

どちらのシンボルも、古来中国から伝わる陰陽五行の概念(森羅万象の摂理)を表すための図象。しかし、このような批判的な意見があり、国旗のデザインを変えるべきと考えている人も少なくありません。

太極旗のデザインを批判する人々の声… 卦の方角がおかしい、縁起が悪い、陰陽五行に即していないでたらめなデザイン、正確に使っていないから、呪術の悪い力や政治や情勢に影響している

どうやら主に「本来の陰陽五行と違う」という意味合いのようです。でもこれらの声が正しいのかどうか、よくわかりません。

真相に近づくために、陰陽五行の世界を少し覗いてみましょう。

陰陽五行について

陰陽五行ってなに?/各図象の説明用画像。陰陽五行(いんようごぎょう)は、古代中国に生まれた自然哲学の思想。この思想に基づいて考えることで、宇宙に存在するすべてのものを説明できるとされている。「陰陽説」と「五行説」が合わさった考え方。陰陽説/万物は、陰と陽の性質が均衡をとって存在している。五行説/物事の生成・変化は木・火・土・金・水の5つの要素から成る。陰陽五行思想/陰陽五行が発展して、「八卦」が生まれた。八卦/方角・四季・干支・色、星や身体の部位など、様々な事象を表す。

ものすごく簡単に表現すると、古代中国の人が自然観察をして、万物についてわかったことを簡潔にまとめた「自然の法則」。それが陰陽五行です。インドや日本にも伝わり、東洋医学・ヨガ・太極拳・茶道・風水などで実践されていて、暦をはじめ、年中行事・お祭りなど、日本の生活文化とも密接な関わりを持った考え方です。

ひとことで言うなら、バランスのとれた状態が最良である。ということなのですが、専門的に学ぶとなると奥が深く、簡単ではありません。

特にややこしく、誤解を生みそうな部分が「八卦」についてです。なんと、二種類あるのです。

太極図のややこしい部分/先天八卦と後天八卦の違いを表した説明用画像。 八卦の順番はひとつではなく、「先天八卦」と「後天八卦」がある。どちらも正しいが、配置・考え方が違うので注意が必要。先天八卦/宇宙の動きを図式化したもの。配列自体に呪力があるとされ、呪符などでも使われる配列。後天八卦/地上の人間の活動様相を図式化したもの。風水の根拠となり、一般的に馴染み深い配列。違い/先天八卦では「乾」が南、後天八卦では「離」が南。その他の七つの卦も、それぞれ方角が違う。韓国国旗は、先天八卦で東西南北をあらわしている。太極も、考え方によって色々なものがある。

一般的によく知られているのは、風水で住まいを見るとき使う「後天八卦」ですが、太極旗は「先天八卦」を使用して作られています。

批判の中に「方角が違う」といったものがありましたが、誤解もありそうです。また、風水では八卦を人に向けること自体がタブー、縁起が悪いとされています。

太極旗は、風水のために作られたものではありません。とはいえ、風水と関連があるシンボルだからこそ、風水の目線で批判されてしまう。批判の原因はその一言に尽きるのかもしれません。

太極旗にまつわる混乱は、それだけではありません。

 

国民でも、正しく描くのが難しいデザイン

韓国国内では、太極旗の四卦である「乾坤坎離(ケンコンカンリ)」をすべて知っている人は20%にも及ばないという調査結果が出ていて、約6割の国民が太極旗を正しく書けないといわれています。

オリンピックや世界的な競技大会の場でも、太極旗の事故が繰り返し起きています。

  • 国旗が逆向きに掲揚され、しばらくそれに気がつかない
  • 大統領や大臣、代表選手らが、国旗を逆に掲げてしまう
  • 代表ユニフォームの国旗が裏返って貼られていた

このような事故が起こるたびに世界でニュースになってしまうので、大変です。

 

混乱を解決するためには…?

太極旗は、古来から伝わる万物の摂理が表現された美しい国旗です。デザインが混乱を引き起こしているのは明らかですが、李氏朝鮮(朝鮮王朝)の時代から国王の旗として使われ、国が変わっても旗として受け継いできた、歴史と伝統のある意匠です。

韓国の国旗は、扱い方のミスや誤解の起こらないようなデザインに変更するべきなのでしょうか。もしくは、このままの国旗を、誰もが間違えず扱えるような、画期的な策が必要なのでしょうか。

なかなか悩ましく、意見が分かれそうな問題です。

みなさんはどう思いますか?

 

 

Created by
chikage egawa

デザイナー / 国旗のデザインの研究記録として。2020年の東京オリンピックに向けて、世界の国旗の読み解き方やおもしろさを、デザインの視点から紹介します。