世界の国旗のデザイン

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国旗のアイコン

同じ配色の国旗、その理由は?

世界の国旗の中には、似ている配色のグループがあります。今回は「汎スラヴ色」「汎アフリカ色」「汎アラブ色」と呼ばれている3つの配色を、それぞれ紐解いていきます。なぜ、同じ配色にするのでしょう。

汎スラヴ色

汎スラヴ色/スラヴ諸国の旗に使用されている、赤・青・白の配色(水平の配色)。自由と革命の理想を象徴している。ロシアの他に、チェコ、スロバキア、スロベニア、クロアチア、セルビア。ブルガリアは青を緑に変えている。

「汎スラヴ色」とは、スラヴ民族の共通の起源を表す、赤・青・白の配色のこと。

ヨーロッパの人々は、ゲルマン民族・スラヴ民族・ラテン民族の3つに大きく分類されます。5世紀に起こった民族大移動で、スラヴ人(スラヴ民族)は周辺諸国に移り住みました。この大移動でヨーロッパは大きく変わり、古代から中世に入っていきます。

後の19世紀、革命・反乱の嵐が吹き荒れるヨーロッパで、スラヴ系民族の連携を図るために「スラヴ会議」なるものが開かれました。そのときに決まったのがこの「汎スラヴ色」。元になったのはこの国旗です。

RUSSIA ロシア/1848年の『スラヴ会議』で、このロシア帝国の三色旗を元にした『汎スラヴ色』ができた。ロシアで初めてこの国旗が作られたのは1699年。ピョートル大帝がオランダの国旗を見て、旗の必要性に気づいたためとされる。革命家たちによって帝政が倒された後はソ連として違う国旗を使っていたが、1991年のソ連崩壊後に復活した。ピョートル1世(初代ロシア皇帝):ロシアが他の西欧諸国に遅れをとっていると自覚していたピョートル1世は、地位を隠し、自ら各国を視察して回った。逸話の多いカリスマ君主。

「汎スラヴ色」は、19世紀ヨーロッパで起こった「汎スラヴ運動」に採用されました。ソ連が誕生した後、「汎スラヴ主義」は名実ともに消滅しましたが、今でも、この三色はヨーロッパで独立を果たした国の国旗で見ることができます。

汎アフリカ色

汎アフリカ色/アフリカ諸国の旗の、赤・黄・緑(黒)の配色。アフリカで唯一の独立国だった、エチオピアの旗が起源。セネガル、マリ、ギニア、ブルキナファソ、エチオピア、ギニアビサウ、ガーナ、トーゴ、ベナン、カメルーン、コンゴ共和国、モザンピーク

「汎アフリカ色」は、アフリカ諸国の国旗で使われている、赤・黄・緑(黒)の配色。

赤は殉教のために流された血、緑はアフリカの植物や農作物、黄はアフリカの富と繁栄を象徴しています。最初にこの配色を使ったのはエチオピアです。

ETHIOPIA エチオピア/アフリカ最古の独立国で人口も多い。植民地支配の時代にも独立を保っていたので、他のアフリカ諸国も独立の際、この赤・黄・緑の配色を採用した。中央には『ソロモンの星』と呼ばれる五芒星の国章が置かれ、人々の結束と愛国心を表している。以前は『ユダの獅子』を国章としていた。LION OF ZIOE:赤・黄・緑の配色と『ユダの獅子』は、ラスタファリ運動のシンボルにもなっている。エチオピアはラスタファリアンの聖地(ZION)とされる。

アフリカで唯一、植民地支配を逃れたエチオピア帝国の色。後に独立を勝ち取ったアフリカの国々は、エチオピアの強さにあやかり、この配色を取り入れたというわけです。(エチオピアはその後の1936年、ムッソリーニによってイタリアに併合されましたが、1941年に独立を回復しました。)

汎アラブ色

汎アラブ色/アラブ諸国の旗に使用されている、赤・黒・白と、緑の配色。オスマン帝国支配に対する反乱旗が起源。左上から、シリア、イラク、エジプト、ヨルダン、クウェート、アラブ首相国連邦、リビア、スーダン、イエメン。

「汎アラブ色」は、アラブ諸国の国旗で使われている、赤・黒・白と緑の配色です。

各色はイスラム帝国歴代の王朝を表しています。アラブ反乱で使われた旗が元になり、アラブ人解放のシンボルカラーになりました。有名な『アラビアのロレンス』は、このアラブ反乱を描いた映画です。

Arab Revolt Flag アラブ反乱旗/第一次世界大戦中、オスマントルコ帝国からのアラブ人独立と、統一アラブ国家の樹立を目指して起こした反乱で使われた旗。歴史映画『アラビアのロレンス』には、このアラブ反乱を率いたイギリス陸軍将校ロレンス大佐の活躍と、大砂漠の中で展開される闘いが壮大なスケールで描かれている。T・E・ロレンス:砂漠とアラブの人々を愛し、同時にイギリスの国益のため奔走した英軍兵士。考古学者でもあり、アラビア語や地理に精通していた。

※劇中にはこの反乱旗ではなく、赤・黒・白など、それぞれ単色の旗が使われています。

そして、アラブ人解放のシンボルカラーとなった「汎アラブ色」は、後に独立したアラブの国の国旗に採用されるようになりました。

さて。

ここまで、世界の国旗の3つの配色を見てきました。

多くの国が、他国の独立や革命・反乱に関する旗を踏襲しています。他国への敬意をデザインで表すことも、国旗のデザインの中によく見られる傾向のひとつ。同じ配色からは「同じ民族のまとまりを大切にしたい」「近隣の国々といい関係を築いていきたい」というスタンスも感じられます。

もちろん、国際情勢は時代によって変わりますが、国旗のデザインには、国際政治的な背景によって発展してきた部分があるのだと考えると奥深いです。

 

 

Created by
chikage egawa

デザイナー / 国旗のデザインの研究記録として。2020年の東京オリンピックに向けて、世界の国旗の読み解き方やおもしろさを、デザインの視点から紹介します。